2019年
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、地域を味わう旅列車。キッチンとダイニングを併設した車両の中で、西日本鉄道(西鉄)沿線の地元の食材を使った自慢の手料理を楽しむレストランです。私たちは車内のBGM選曲、オリジナルテーマ曲の制作、そして発車合図のサウンドをプロデュースしました。
レールキッチンが走る西鉄・天神大牟田線は、福岡市から大牟田市まで福岡県を縦断し、沿線の方々の生活を支えるライフライン。車窓からの風景は、福岡の中心部から住宅地を抜け、田園風景や豊かな自然へと変化していきます。車内を流れるプレイリストは、西鉄沿線の風景を眺めながら料理を楽しむ時間を心地よく過ごすことができる音楽を選曲し、オリジナルテーマ曲は旅をリラックスしながら楽しめて、かつワクワクされるような軽快なリズムの楽曲を制作しました。
そして、レールキッチンの発車合図として制作したのが『ディナーベル』。車掌がホームに出て、ディナーベルを奏でると列車の旅は始まります。
19世紀のアメリカ西部、食事への強いこだわりを持つカウボーイたちは、チャックワゴンという炊事用ワゴンの荷台にたくさんの調味料とダッチオーブンを積み込んで、仲間とともに広い荒野の中で毎晩宴を開いていました。食事の準備ができた時には、トライアングルでできたディナーベルを鳴らし、それを知らせていたそうです。
このカウボーイたちからアイディアを借りて、完全ハンドメイドのトライアングルの工房「北山トライアングル」の協力を経て、3つのトライアングルからなるオリジナルの出発合図を考案しました。大中小の3種類のトライアングルから奏でられるメロディは印象的で、この音色は旅が始まるワクワク感を一層高めるものとなりました。
レールキッチンのプロジェクトは、私たちにとって音楽を楽器から制作した初めての経験でもありました。西鉄沿線の風景から連想されることを、ひとつひとつ言語化して音楽に変換しアウトプットしていく。チーム全体で何度も対話を重ねて作り上げた、大切なプロジェクトとなりました。